心エコー症例提示

症例 1.不安定狭心症

5年前から高血圧症、糖尿病、脂質異常症で通院治療中に、夜テレビを見ているとき5分間の胸痛が出現。 その後、安静時に胸痛が出現。5分ほどの絞扼感。さらに翌日夜は冷汗を伴う胸痛が40分間出現したため来院。
心電図:V4~6:ST軽度低下
心エコー
左室収縮力
正常
左室壁運動
正常
(収縮遅延なし)
正常


安静時心エコーは正常であったが、ホルター心電図で記録中、胸痛出現時に著明なST低下(虚血性変化)を認めて不安定狭心症と診断。
基幹病院にて冠動脈造影検査:右冠動脈に99%、左冠動脈前下行枝に90%狭窄を認め、ステント植込み施行し狭窄は拡張して改善した。
多くの狭心症の症例は、安静時心エコーで左室GLSが正常であることが多いので、運動負荷心エコー検査で確認する必要がある。

症例 2.重症不安定狭心症

4日前からから坂道、階段で胸痛が出現するようになり来院。心電図では明らかな異常所見はなかった。
心エコー 安静時
左室前壁中隔
収縮力は軽度低下
左室前壁中隔の収縮遅延
(虚血による変化)


心エコーでは明らかな左前下行枝領域の虚血による収縮力の低下と壁運動の異常を認めたので、重症不安定狭心症と診断して基幹病院へ紹介した。 その日のうちに冠動脈造影検査を施行した。前左下行枝近位部99%狭窄であり、ステントにて拡張した。
術後心エコーでは著明に改善し、正常化した。

左室収縮力正常化
左室収縮遅延も改善した


症例 3.安静狭心症

2晩続けて就寝前から左胸部圧迫感が出現したために来院した。安静時心電図には異常なく、トレッドミル負荷心エコー検査を施行
心エコー 安静時
左室収縮力は正常
右冠動脈領域に収縮遅延


負荷後
左室収縮力は正常
左室壁運動異常は改善


運動負荷で正常化するので冠動脈には狭窄はなく、右冠動脈の攣縮(痙攣)による狭心症(冠攣縮性狭心症)と診断。冠拡張剤による治療開始後、症状は改善した。
6週間後に心エコーを再検。

安静時
左室収縮力は正常
左室壁運動異常は正常化


症例 4.労作狭心症

毎日ウォーキングをしていて歩行中に胸痛が出現。安静にして数分で改善。その後も、歩行時胸痛が続くため当院受診し、トレッドミル負荷心エコーを施行。負荷により心電図でST低下(虚血性変化)出現。
心エコー安静時
左室収縮力は正常
左室壁運動正常


負荷後
左室収縮力正常
左冠動脈領域の壁運動異常


負荷後に左前下行枝領域の虚血による変化を認めたため冠動脈造影検査を勧めた。その結果、第1対角枝起始部狭窄が存在し、ステント植込みにて拡張。その後、狭心症は改善した。

症例 5.陳旧性心筋梗塞(前壁中隔)、左室瘤

19年前、急性心筋梗塞(前壁中隔)発症、ステント植え込みで改善。入院中に心不全合併、左室壁運動低下に伴う左室内血栓予防目的で抗凝固剤投与。
心エコー
左室駆出率:45%
左室前壁中隔収縮力低下
左室心尖部は心室瘤(青色)
左室前壁中隔壁運動異常
心尖部を中心に運動異常


症例 6.急性心筋梗塞、DES植え込み状態(#7)

急性心筋梗塞(前壁中隔)発症、緊急入院し左前下行枝#7にステント植込みを受けた。その後当院へ転院。
1ヶ月後、心電図:陰性T波は軽減。
心エコー
左室壁運動正常、左室駆出率:68%。
左室前壁中隔の収縮力軽度低下
前壁中隔の収縮遅延


10ヶ月後 冠動脈造影検査:再狭窄なし、第1対角枝:50%狭窄のみ
1年後心エコー 正常化


心筋梗塞発症早期に閉塞冠動脈を再疎通させるとこのように正常化することが多い

症例 7.拡張型心筋症、永続性心房細動

30年前から拡張型心筋症、心房細動と診断され当院通院。
心エコー
左室駆出率:28.9%、左室拡張あり
左室全体の収縮力低下
左室壁運動異常を認める


症例 8.無症候性心筋虚血

高血圧症で通院治療中、不整脈を指摘され、精査目的で来院。胸痛などの自覚症状は全くなく不整脈を指摘されたのみ。
トレッドミル負荷心エコー:ST低下軽度、負荷中の上室性期外収縮少数 負荷前後ともに心エコー上変化なく下図のように左回旋枝領域の虚血S所見であった
左室後壁の収縮力低下
左室後壁の収縮遅延


冠動脈造影検査:左回旋枝#13:100%閉塞、対角枝#9:90%狭窄。左回旋枝はステント挿入できず、#9のみ拡張した。

症例 9.持続性心房細動、大動脈弁閉鎖不全症Ⅲ°、慢性心不全

食欲低下して消化器内科受診。心疾患を指摘されて当院を受診。動悸、脂汗、息切れで目覚め、労作時息切れあり。
心電図:心房細動、心拍数:160/分、X線:心拡大、下腿浮腫著明、BNP:1361.3pg/mlと著明高値。
心エコー
大動脈弁閉鎖不全症Ⅲ°
左室拡張、左室駆出率:37.3%
左室収縮力は低下
左室収縮遅延領域はない


重症大動脈弁閉鎖不全症なので心臓血管外科を紹介
3か月後に心臓血管外科にて大動脈弁置換術+MAZE+左心耳切除を受けて、術後、心房細動は改善し、心機能も著明に改善
10ヶ月後心エコー
左室拡張はあるが、左室駆出率:77%に著明改善
左室収縮力は正常化
左室壁運動も正常