頚動脈エコーの重要性

糖尿病や高コレステロール血症、高脂血症などの脂質異常症を指摘されたら、動脈硬化がどの程度あるかの検査が必要です。

また、動脈硬化の診断には血圧脈波検査も有用であり、動脈の硬さを調べる検査(CAVI)、下肢動脈の狭窄や閉塞を調べる検査(ABI)で、血管の状態(硬さ・詰まり具合)を調べます。

頚動脈エコー

  1. 左右頚動脈を内頚動脈、外頚動脈まで観察して血管壁の内膜中膜厚を測定し1mm以上のプラークの合計点数で動脈硬化の程度を診断します。
  2. 椎骨動脈の血流も計測するので椎骨動脈循環不全も診断可能です。

症例1

3年前の4月から右視力低下し、眼科にて右網膜中心動脈・静脈閉塞症と診断され、頚動脈エコー検査目的で来院した。ヘビースモーカー
頚動脈エコー:動脈硬化は高度(プラーク合計:14.1mm)
右頚動脈 1.9mm,3.1mm,2.5mm
左頚動脈 1.7mm,2.6mm,2.3mm

頚動脈硬化症が高度であり、左右内頚動脈プラークが大きいので、脂質改善剤、抗血小板剤投与開始して、高血圧症の治療も開始しつつ禁煙を勧めていたが禁煙できないままに経過し、1年後に心筋梗塞を発症した。緊急で冠動脈ステント植込みを受けて改善。その後も通院して禁煙できている。

この症例のように頚動脈硬化症が高度であれば虚血性心疾患を発症しやすい。

症例2

5年前に脊柱管狭窄症の術後も左下肢の間欠性跛行が改善しないため来院。左浅大腿動脈狭窄症と診断、O病院紹介してステント植込みにより改善した。通院当初から頚動脈硬化症が高度で、2年後に左内頚動脈狭窄が進行したが自覚症状なし。
頚動脈エコー:動脈硬化は高度(プラーク合計:25.1mm)
右頚動脈 4.8mm,2.8mm,5.2mm,1.3mm
左頚動脈 2.8mm,4.0mm,4.2mm

左内頚動脈が90%狭窄に進行したのでF病院へ紹介。左内頚動脈にステント植込みを施行、0%に改善した

術後10ヶ月目の頚動脈エコー 動脈硬化は高度(プラーク合計:16.9mm)
右頚動脈 4.8mm,2.8mm,5.2mm,1.3mm
左頚動脈 2.8mm,ステント留置

この経過中に狭心症が出現。ウォーキング中に胸痛が出現するようになり、労作虚と診断。F病院で冠動脈造影検査を受け、左前下行枝 #6-7:75%狭窄に対しステント植込み施行